愛を知らない女

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「だって、研修施設では馬車馬のように働かされるって聞いたよ?当直では内科も外科も関係なく全部診るんだって。私と遊んでくれる暇なんてある訳ないもん!」 ふて腐れた様子で言う彼女。 ある訳ないもん!って……子供みたいに。 それに、 「馬車馬のように働かされる?……あんた、研修を目前とする私を脅してるの?」 拗ねた顔をする友人を見据え、私は嬉しく思いながらも苦笑いを浮かべた。 「脅かしてる訳じゃ無いけどさ。まあ、それが他機関研修の狙いであり醍醐味でもある訳だけど。……あ!研修機関によっては、今よりお給料が上がるらしいよ。リッチになったら飲みに連れて行ってね」 口端を下げシュンとしていた姿とは一変、突然と悪戯気を含んでニッと笑う彼女。 リッチになったらって…… 同じ大学病院なんだから、そんな大差は無いんじゃないの? と、思いつつ。 「はいはい。馬車馬のように働かされてボロ雑巾になっても、ちゃんと奢りに来てあげるから安心して勉学に励むのよ」 こうして何気ない会話をしながら、学生気分でこの道を歩く時間はあとどれくらいあるのだろう。 友人と新緑が香る中庭を歩きながら、鼻腔一杯に爽やかな春の風を吸い込んだ。
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