シークレット・パーティー

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花びらが暖かな風に乗り、降り積もった白雪のように桜が咲き乱れる4月。 私は研修先である大学病院の近くにマンスリーマンションを借り、初めての環境で新しい研修医生活をスタートしていた。 ―――  「瑞木さん!」 背後から聞こえたのは私を呼び止める声。 早朝から超特急で仕事を片付けた私は、窓に映る夕焼けを背にして振り返った。 「葛城先生……」 更衣室に向かう私の足を止めたのは、消化器内科病棟で指導医をしてくれている葛城(カツラギ)医師。 「どうしたんですか?……何か仕事に落ちでもありました?」 白衣を靡かせながら小走りで近づいて来る彼を見て、急いで捌いた自分の仕事に何か不手際があったのでは無いかと不安になる。 「いやいや、違うんだ。今日は君が来て最初の土曜の夜だろ?親睦会として一緒に食事でもどうかと思って」 「……親睦会なら来週の金曜だと聞いていますが」 眼鏡の奥で目を細めて笑う30代後半と見受けられる男性をジッと見て、私は一歩引いた言葉を返した。
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