サヨナラの音

7/24
前へ
/844ページ
次へ
天海陽菜乃とよりを戻すなんて有り得ない! だって悠希は、大勢が見ている前であの子を振った。本気で好きなのは私だって、そう言ったんだから! 顔を引き攣らせながら、いつもより大きな歩幅で足を速める。 視界に入るのは、昼食を終えて其々の配置に戻る人達。その流れに逆らって進む私は、食堂に入る一歩手前で急ブレーキをかけた。 蛇行させた視線が捕らえたのは、私から遠ざかっていく後ろ姿。人の隙間から見えた背中でも、私が彼を見間違える筈が無い。 悠希!待って! その背中を追う私は、エレベーターの前に立つ彼を見て息を止める。 「どうして……」 一瞬にして凍りついた視界。 私が距離を置いていた彼は、別れた筈の元カノと肩を並べ、まるで二人の間には何も無かったかの様に笑い合っている。 どうして陽菜乃と一緒に!?どうして仲良くランチなんて出来るの!? 二人を凝視しながら荒々しく上っていく血潮。 どう言う事なの……その子とよりを戻したと言うのは本当なの? 衝撃と怒りで顔がカッと熱くなる。
/844ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7117人が本棚に入れています
本棚に追加