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向けられているのは、私を小馬鹿にしていると分かる疎ましい視線。
「そうですけど。何か?」
二人を交互に見た私は、不快感を露わにして眉根を寄せる。
「院内で二人の後を追い掛けて。自分が惨めになりません?」
「惨め?私が?」いきなり何なの!?―――って、それよりこの女は誰!?
悠希と陽菜乃の事だけで一杯一杯だと言うのに。突然の非礼に苛立ちを覚える。
「……あなたは誰?」
「私達は陽菜乃の同期です」
天海陽菜乃の同期?―――そう言われてみれば、私を眺めてコソコソと陰口を叩いていた女達の中に、こんな顔も混じっていたような気がする。つまり、あの娘の取り巻き連中って事ね。
安い友情で結んだ女の馴れ合いには興味がない。
「そう。それで?私が惨めってどう言う意味?」
ウザったい視線をかわして冷静な息を置く。
「だって、あなたは敗北者でしょ?それなのに別れた男を追いかけて」
「敗北者?別れた男って……」
「あれ?もしかして、皆がまだ知らないとでも思ってます?陽菜乃と直江くんの正式な婚約の事」
愕然とする私を見据る取り巻き女の一人が、口端に笑いを浮かべて首を傾げた。
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