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挑発的な彼女が口にしたのは、我が耳を疑うほどの衝撃的な言葉。目を剥く私は聞き返すための言葉も出せず、石の様に体を固める。
「陽菜乃は彼の浮気を許しました。あなただって、最初から遊びのつもりで直江くんに近づいたんでしょ?」
「浮気を……許した?」
「ええ。だからもう彼に近づくのは止めて下さい。これ以上、陽菜乃を傷つけないで!」
嫌悪を剥き出しにして私を睨み付ける。
エレベーターの前で立ち話をする女が三人。険悪な空気を感じてこちらに目を向ける者もいれば、好奇心で足を止め、見世物でも見るように様子を窺っている者も居る。
「……正式な婚約って、本当なの?」
「えっ?」
「ねぇ、本当は嘘なんでしょ?……分かった。あの女が考えた嫌がらせ。そうなんでしょ?」
悠希がこんな形で私を放り出す筈が無い!こんな形で裏切る筈が無い!
「はぁ?なに言ってんの?」
「正直に言いなさいよ。嫌がらせだって、言いなさいよ!」
興奮が極限に達し、思わず彼女の腕を掴んだ。
「ちょっ、何なの!?いっ、痛い!止めて!離してよ!」
驚いた彼女は私の手を振り払い、気狂いした異常者を見る様な目をして後退りをする。
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