サヨナラの音

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――― 無情に流れて行く街のネオン。 三車線道路の両側に高層ビルが立ち並ぶオフィス街を抜けると、スーパーやドラッグストア、花屋など日常を感じさせる静かな街並みが見える。 小さな住宅が肩を寄せ合う中で、一際目立つ高級マンションが彼の住まい。その前でタクシーを停車させた私は、昼間の決意を胸に秘めながらアスファルトに足をつけた。 マンションへ向かって歩く私の鼻腔を掠めて行くのは、青葉の香りを含んだ生温い初夏の風。 ジメジメとした空気の中に深い息を吐くと、夜空の中に浮かび上がる光の集合体を見上げた。 この灯りの中には、彼の部屋の照明も混ざっているだろうか。ここからでは彼の部屋の位置が分からない。 ただ、昼間のうちに駐車場で確認した彼の車は、私が病院を出る頃には既にそこには無かった。 真っ直ぐ帰宅しているなら、彼はきっといつもの様にソファーに寝ころんで、ビールを飲みながらバラエティー番組でも見ている時間。 けれど、もし誰かと…… 天海陽菜乃とその足でデートをしているとすれば、今は留守。その後にホテルに連れ込んだとしたら、帰宅は何時になるのか―――
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