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「悠希、ねぇ、どうして黙ってるの?」
噂は信じない。その子の言葉も信じない。
「私達が終わったなんて、そんなの嘘でしょ?」
だって、私達は未だ決断をしていない。終わりだなんて言っていない。
「あなたの口から、本当の事を聞かせて」
不安を押し殺した声に涙が漂う。祈りながら唇を噛み、彼を見つめる瞳に何一つ変わらない愛を映し出す。
「……御免」
風の音と共に耳に流れ込んで来た低い声。
「え……」――――ゴメン?
「婚約は本当だ。俺は陽菜乃と結婚する」
私の願いは叶う事なく、彼の口から発せられたのは耳を塞ぎたくなる非情な言葉。
視界が真っ白になる。顔面から鈍器で殴られた様な衝撃を受けた私は、息の根も止められてその場に立ち竦む。
「あーあ、可哀想な人。でも、あなたが悪いのよ?人の彼氏に手を出すから。あなたなんて、最初からただの遊び相手だったのよ」
放心状態となった私を見据え、悠希の腕に絡みつく彼女がククッと喉で笑う。
どう言う事なの……何が起こってるの……
私がただの遊び相手?
私のために命を懸けてくれたホワイトゲームも、心を温めてくれた優しい言葉も、一つに溶け合うあの情熱も――全部が偽りだったと言うの?
「私がいけないの?あなたを避けていたから。だから怒って――」
「……いや、そうじゃない」
眉間を寄せ静かに首を振る彼。
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