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「……陽菜乃、」
「何を躊躇ってるの?昨夜だってしてくれたじゃない。ベッドの上で情熱的なキスを」
癪に障る猫なで声。彼女は上目遣いで彼を見て不敵な笑みを重ねた。
―――昨夜もしてくれた?ベッドの上って……
彼女の言葉に我が耳を疑う。
嘘だ。
悠希が彼女を抱くなんて、そんなの嘘だっ!
そうでしょ悠希?その女の戯言でしょ?
潤んだ瞳で彼を見つめる。けれど、彼は否定をすることも無く口を噤んでいるだけ。
……そうなの?その女を抱いたの?
絶望感の中で身体中の血液が遡り、同時に爆発しそうな焦燥が込み上げる。
次の瞬間、私の目に飛び込んできたのは、彼女の体を引き寄せる彼の姿。
彼女を見下ろす無機質な瞳。彼の心がまるで読めない。
すると沈黙を保つ彼は、吹っ切ったかのように彼女の後頭部に手を回した。
駄目……
やめて……
キスしないで!
「イヤッ!悠希やめて――――っ!!」
狂気に囚われた声が静寂を裂く。
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