自慰

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煙草の匂いが染みついたラブホテルの一室。 「そろそろ挿れて良い?」 名字しか聞いていない出会ったばかりの男が、私の秘めやかな入口に猛り立つモノを当てがって言う。 ―――何が「そろそろ」だと言うのか。そろそろなんて言葉が使えるほど、ろくに体を弄りもしないで。 「……ええ、いいわ」 両手で内股を大きく開かれた私は、蜜口で逸る先端の肉圧を感じながら、冷めた感情を偽りの笑みで隠す。 最初から女を悦ばせようなど思ってもいない、単に挿入可能な状態にさせるためだけのおざなりな愛撫。 繋がる相手が満たされようが満たされまいが、射精の一瞬だけに訪れる快楽が目的のセックス。 つまりは私に向けるこの薄っぺらな笑顔も、一刻も早く腰を揺らして果てたいと言う欲望のカモフラージュに過ぎない。 「じゃ、遠慮なく」 まるで獲物を押え込んだ獣のように、男は腰を打ちつけ一気に恥肉の壁を抉じ開けた。 「ああっ…はぅ…ッ」 突き上げられる刺激で喉を突いた声。それを追って、男は更に腰の動きを速める。 部屋に響くのは秘肉がぶつかり合う淫靡な音。 「はあぁッ……うっ、ああぁぁ――ッ」 下腹部を壊される様な激しさで息が出来ない。けれど、その体を支配するのは歓喜ではなく空虚な快楽。 「……綺麗だ。こんな綺麗な女性を抱けるなんて、今夜の俺は運が良い」 荒々しい息をあげて顔を歪める私を見下ろし、男は汗ばんだ顔に満悦を浮かべた。
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