自慰

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悠希の心? 私を無理やり突き放し、医師として将来の安定を選んだ悠希の本音。 「アイツの心の内なんて見えてるわよ。血の繋がった姉弟である私達に未来は無い。だからさっさとケリをつけた。それだけの事」 理屈は解っている。陽菜乃の存在が有ろうが無かろうが、どんなに想い合っていても別れるしか道は無い。 けれど、解っていても心が倫理を受け入れない。 あんな酷い振られ方をしたのに、いつかあなたが私のところに戻って来てくれるのではないかと、そんな未練がましい夢を見る。 早朝、目が覚めた時にはあなたを失った悲しみに打ちひしがれ、日暮れ時には怒りと憎しみで心を濁す。 毎日がそれの繰り返し。這い上がり方も分からなくて、癒されること無く愛憎の念が入り混じる。 「アフリカへ渡って現地の人達を救うとか大きな事を言っておきながら、結局は院長の椅子が惜しくなったのよ。そう言う男なのよ。アイツは」 吐いて捨てるように言って、行き着くところを見つけられない感情を隠した。 「違うのよ。あの子は……、悠希くんは麗ちゃんを守りたいのよ」 風が肌に触れるように、耳を掠めていった低い声。 「私を守る?……どう言う意味?」 「……」 「磯崎さん?私を守るって何?」 磯崎さんの表情にどこか違和感を感じる。 そう言えば…… 私の傷心を知りながらも、磯崎さんは一度も悠希を悪く言わない。そればかりか、私に何かを気づかせようとする助言ばかりを口にする。 もしかして…… 「もしかして、悠希から何か聞いてるの!?」
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