愛は初恋とともに

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唇を重ねた関係でも、知り合ってまだ一週間も経っていない。 それなのに、どうして私にそんな話を打ち明けてくれるの? あの夜、お互いの生い立ちを共感し合えた仲だから?――――だけど、今聞いた彼の話には素通りできない違和感がある。 「どうしてあなたみたいな人がイジメを?それに引きこもりなんて、今のあなたからは想像が出来ない」 触れてはいけない心の傷だと思いながらも、彼の前ではつい出てしまう本音。 「俺がイジメられてた理由?それはたぶん……」 「たぶん?」 「生意気でいけ好かない奴だったから。ほら、俺って俳優並みのイケメン&イケボじゃん?だから皆が嫉妬する」 「はぁ!?」 何が『ほら』で、何が『じゃん?』だっ! 「何度も言うけど、よく恥ずかしげも無くそんな事を言えるわね。いけ好かない理由は、外見じゃなくて性格の問題だと思うけど?」 白い歯を出して笑う彼を見据え、釈然としないため息を落とした。 ――――結局はぐらかされた感じ。 彼の言葉はいつも、どこまでが本気でどこからが冗談なのかまるで分からない。 医者によく居るタイプの遊び人のお坊ちゃんかと思いきや、ベテラン医師を唸らせる程の超絶したスキル。 あなたの本当の姿は何処にあるの? 指先が触れた瞬間に消えてしまう、フワフワと宙に浮かぶシャボン玉のような人。 だからこそ、もっと奥深くまで知りたくなって―――― 「それともう一つ。アフリカの難民生活を見て来たあなたが、よく平気で今の贅沢三昧な生活が出来るわよね。アフリカでは女遊びも出来ないでしょうに」 先ほどお皿に置いたネギマをやっと口に入れ、わざと意地悪を口にした。 「だって、俺が湯水の如く使う金は、本来次男に渡るための金だから」 「はっ?」 「家を出た兄は財産相続放棄をしている。つまり、親父の金は次男の金。日本に居る間に俺は好きに使わせて貰うさ。アフリカにいる兄さんの分までね」 そう言って、彼が悪びれなくニヤリと笑う。 「それが真ん中のお兄さんへの復讐のつもり?」
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