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「復讐なんて人聞きの悪い。単なる俺の鬱憤晴らしだ!」
「呆れた。どっちも同じじゃないの」
意気込んで小鼻を膨らませる彼が可笑しくて、思わずプッと吹き出してしまった。
「俺、女遊びをしている意識は無いんだけどな」
少し冷めたネギマを胃に納め、一息ついたところで耳に届いた言葉。
「……はっ?」
あんぐりと口を開け、「食事中に寝言ですか?」と言わんばかりに彼をマジマジと見る。
「確かに女の子は大好きだけど、付き合ってる女の子はどの子も平等に接してるつもりだし。特別を感じさせないように気をつけてる」
付き合ってる女の子はどの子も?……って、何人も彼女が居るって事!?
いや、まあ、この男なら十分有り得るんだけど。だってあのパーティーでも取っかえ引っかえしてた訳だし。
だけど……
「特別を感じさせないように気をつける?どうして?」
唖然としながら問いを口にした。
「だって、女性は『自分だけ特別』が大好きだろ?他にも付き合ってる娘が居るのにそれを口にしてしまったら、それって完全なペテン師じゃん?優しさも平等、愛情も平等、セックスも平等。平等社会には紛争が起きないからね~」
「……」――――――はい?
恋愛に平等社会?
何の社会政策ですか?
……って言うか!男女関係にそれは有り得ないだろ!
一体コイツはどう言う観念で生きているんだっ!
飄々と言い切った彼を見据えて開いた口が塞がらない。
絶句と同時に、得体の知れないモヤモヤとした感情が湧き起こる。
「……何人いるの?」
「ん?何が?」
「今、あなたが付き合ってる女の数よ」
「ああ、……気になる?」
間を空けて、彼は私の心を探るかのような微笑みを浮かべた。
「別に気になるって訳じゃなくて!大口叩く男が何人を同時に相手にしているのか、好奇心で聞いただけよ。答えたくないなら別にいいから」
慌てて重なった視線を外して言い捨てると、その口もとに笑みを貼り付けカクテルに手を伸ばした。
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