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親友が同性愛者だった。
それがわかったのはついさっきのことだ。
空き教室で偶々、親友である瀬川環が男と性行為をしているのを見てしまった。
目撃した本人、玉響隼人が何しにいったかと言えば、教師に頼まれた資料をしまいにきたのだ。
普段は出さないような高い声でないて、男によがる環と目があって、何事もないように笑顔で話しかけてきたそいつに隼人は奇妙な感覚に襲われた。
隼人を見て男は慌てたように逃げて。
環はつまらなそうに隼人を見る。
「何してんの、お前」
「あらぁ、ばれちゃった」
へろへろ笑いながら身だしなみを整えようとしない環から隼人は目を逸らした。
「見てわかんない?エッチしてたんだけど」
わからないと言いたくなる。
見てしまったから否定はできないけれど。
「お前さ、プライドとかないの、男としての」
「何それ、隼人の価値観押しつけないでくんない?腰振るのだるいし、でも気持ちよくなりたいんだもん」
だから女役をやるってか、おかしいだろ。隼人は何だか頭が痛くなってきた気がした。
「お前のせいで相手いなくなっちゃったんだから相手してよー、隼人」
「気持ち悪い」
「だよね、言うと思った」
笑いながらそう言った環を隼人はちらりと見る。
彼は何だか寂しそうで、泣き出しそうな笑顔だった。
「……環、」
座っていた机から飛び降りて、環はケータイを取り出していじりはじめる。
よれよれのシャツを着直して、隼人の横を通り過ぎていった。
電話をかけているのかケータイを耳に当てる。
「もしもし原田ぁー、5時間目休んで俺とイイコトしなぁい?俺ひ……」
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