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土手沿いには化け物が、逃げるには川に飛込むしかないが高さがあり、おまけに流れも強い。
・・・年貢の納め時かな・・・
柳二は本当に覚悟を決めた。
他の奴らはと言うと中年は娘の横で喚きながらガクガクし、女性は今にも泣きそうな顔で震えている。機動隊の隊員達は三人を守る様に立ち銃を化け物に向けて構えていた。
しかし隊員達は構えてるだけですぐに撃つ気配がない。おそらく先程の戦闘で弾薬を消費した上にこの数、下手に撃ってもたいした意味はない。それどころか一発撃った瞬間に一斉に飛びかかられるかもしれない。柳二としてもそれだけは避けて欲しい、が
「おい、あんたら何ボサッとしとんねんはよ撃たんかい❗」
(ったく、このオヤジは・・・)
若干呆れ顔で柳二は思った。そしてさらに中年の男性は怒鳴り続ける。
「お前らはワシらを助けんのが仕事やろ❗ちゃんと仕事せんかい❗」
「コラおっさん❗お前ええ加減にせいよ❗」
さすがに柳二も頭に血が昇って隊員に怒鳴ってた中年に絡んだ。
「何様のつもりか知らんけどな、後ろでビクついとる奴がウタってんなや」
「やかましわガキが❗ゴチャゴチャ口出し・・・・うわあぁぁ❗❗」「❗[?]」
話しの途中で中年男性の背後にゴキブリの一匹が飛び付いた。
「ひ・・・ヒィイイイィィとってくれぇえええ❗❗」
「ちぃ❗」
柳二は持っていたナイフで化け物の頭めがけて突き刺そうとしたがその他のゴキブリ共が待ってた様に次々と男性に群れだした。
「お父さん❗❗」
「❗、危ない❗」
傍らにいた娘が男性に駆け寄ろうとしたため柳二は彼女を取り抑え、引き離した。
男性は必死にもがき叫んでいたが直ぐに沈黙し、代わりに肉が千切れる音と血が流れだした。
「くっそぉ❗」
隊員の一人が男性に群がるゴキブリに銃弾を放ったがその隙を突くように隊員の背後にもゴキブリが群がった。
この時隊員がもがいた時に拳銃が転がり、偶然にも柳二の足元に来た。
「・・・❗」
反射的に転がって来た拳銃を見ていたがハッと顔あげると一瞬でゴキブリの頭が視界一杯に映り込んだ。
「ぬおおぉぉ❗❗」
女性の頭を無意識に押さえ込み、柳二は一心不乱にその場にしゃがみ、突進をかわした。と、同時に足元にあった拳銃も拾った。
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