0人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前そんなん読んでんのかよ!」
目の前にはライトノベルを引き裂くNPCとその取り巻きA,B。
いや、この状況下俺に味方はいないから、A~E'くらいいるのか?
いつかはこうなるだろうと思っていたのだが、まさか中一で起きるとはなあ・・・
まあ、ただの運が絡むバットイベントなのだろう。相手は所詮NPC。俺のラックの問題。
罵詈雑言を浴びせられ、最早使い物にならない頭に何度も言い聞かせる。
何回も言うが、コイツらはNPCだし、大丈夫。
・・・けど、この時の俺は、コイツらを人間として見てしまった。
それは、ずっと逃げ続けた俺が、始めて傷付いた瞬間だった。
そんなこともあってか、俺は学校でラノベを読むのをやめた。換言すれば、更に逃げただけなのだが。
逃げて逃げて逃げ続けて、俺は遂に『いない者』となった。
目もあわせず、耳も傾けず。
俺もそれ相応の対応、思い付いたのは、NPCをNPCとも思わないことだった。
つまり、アイツらを『いない者』として扱った。
そう、ここにお互いWINWINな関係が結ばれた。いや、勝ってねーか。引き分け。ステイルメイト。
まあ、何ともありがたい話だ。
・・・という関係も長くは続かず、時は中二の夏休み明け。
俺の机の上には、敗戦の証であるいくつかの写真が無駄に綺麗に並べられている。写っているのは、書店でラノベを探す俺。恐らく夏休み中にとったものだろう。
十秒程静寂が続いただろうか、三人いる男のうち、真ん中の男が両隣の男と目を合わせ、口をゆっくり開く。
「お前さー、まだこんなもん持ってんのか?」
ポケットから取りだし、高々と掲げたのは一冊の小説。
ただし、お所有者は俺じゃない。
夏休みの終わり頃、お前らが書店でラノベルーム付近を彷徨いてたのはそういうことだったか。
自分で買った小説を使って、俺を貶そうと言うわけか。ラノベ読んでることは否定しないけど。
何にせよ、人間って本当に下らねー。
最初のコメントを投稿しよう!