産まれると決めたその時に

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**  僕はずっとここで羽の生えた人と、僕のような待っている子達と一緒に居た。僕はずっと雲の上から待っている。何度も何度も地上を見て探している。そうしてようやく僕は見つけたんだ。  「僕、あの人達がいい。あの人達の子どもになりたい」  僕は羽の生えたキラキラした長い髪の人の所に行き、そう伝えた。その人はとても綺麗な顔をしているんだ。その人が僕を手のひらに乗せて、話しを聞いてくれた。その人は綺麗に笑うと僕にキスをしてくれた。  「本当にあの人達でいいのかい? あの人達は君に相応しいかな?」  「だってとても優しそう。あの人達じゃないと嫌。きっと僕の事も愛してくれる。あの人達じゃなきゃダメなんだ」  「……そう。いってらっしゃい。私達の可愛い子よ、また会える日を楽しみにしているよ」  その人はそう言って微笑むと僕を手のひらから降ろした。僕は目を閉じてあの人達の元に向かう。眩しい光の中から真っ暗な世界に飛び込む。そして僕は『僕』になる為の時間を過ごすんだ。  あの人達はいつ気付いてくれるかな? 僕は早く気付いて欲しいな。雲の上から見ていた様に優しい笑みで僕の事を撫でて欲しい。綺麗な美しい声で僕に名前をくれる日を楽しみにしてるんだ。  オカアサン、オトウサンようやく会えるね。  羽の生えた人からは何度も言われた。僕だけじゃない。皆に言い聞かせていた。人間になる時にはあの眩い世界で過ごしたことを忘れてしまうんだ。少し悲しい気もする。羽の生えたあの優しい人の顔も忘れてしまうんだ。雲の上から見ていた沢山の人の事も、一緒に過ごした僕と同じ子達の事もいつか忘れてしまうんだ。  人間の赤ちゃんが話したり自由に動けないのは雲の上での事を知らせてはいけないからなんだって。どうしてかなんて分からないよ。でもそれが決まりだって、あの羽の生えた人は優しい顔でそう言っていた。だから僕もきっといつか忘れるんだ。どうしてこの人を選んだのかもきっと忘れちゃうんだ。やっぱり少し寂しい。僕を僕と証明するものが何一つ無くなってしまうんだ。 でも悲しむことは無いと教えられた。オカアサンとオトウサンが愛してくれるから大丈夫だよ、と何度も羽の生えた人は優しい声でさとしてくれていた。だからそうなんだと思う。この人達と居れば僕は寂しくないんだと思う。
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