産まれると決めたその時に

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**  「お母さん! 僕今日幼稚園でね、名前のゆらい、聞いておいでって言われたの。ゆらいってなあに? せんせいはお母さんとお父さんがどうして、この名前を付けたのかって事だって言ってた!」  お母さんは晩御飯の支度をしていました。まだ幼い僕に振り返ると笑顔で視線を合わせ、しゃがみました。  「希、希はね? お母さんの希望なの。だから希って言うのよ?」  「僕がお母さんの希望?」  「そう。お母さんね、希を産む時いっぱい悩んだの。希を幸せに出来るかなって? お母さんは産まれてから希に会うまで、自信が無かったの。自分の人生に希望が持てなかったの。もしも、希もお母さんと同じ思いをするならどうしようって。それなら初めから辛い思いをしない方がいいのかもしれないって思ったの」  「僕、お母さんの子どもで、幸せだよ。お母さん優しいし、お父さんも面白いし、皆でいっぱい遊んで楽しい」  「うん。お母さんも希がお母さんの子どもで嬉しい。いっぱい迷った時に、気のせいかもしれないけど、希がねまだお母さんのお腹に居た時、オカアサン、って呼んだ気がしたの。お母さんの子どもになりたいよーって言ってくれた気がしたの」  「僕覚えてるよ! お母さんのおなかの中暗くて、でもお母さんの声が聞こえてた。優しい声だなって思った! 何回もお母さんって呼んだんだよ?」  「うん! だから、希望が持てたの。私は希を愛してるって分かったの。希を幸せにするんだーって思ったの! 希はお母さんの大切な子どもで希望なのよ」  お母さんはそう言うとニッコリ笑って立ち上がりました。晩御飯の用意に戻ったのです。僕もお母さんに似た笑みを浮かべていました。
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