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 わたしは気持ちの上ではまったく納得できませんでしたが、 そこは過去に夫だった人の言葉、 その宣言は恐らく本当のことなのだろうと頭の中では理解致しました。  今思えば、 娘の苑子はあんな辛い状況の下で流産もせずに良く晃さんを産んだものだと感心させられます。  もしもわたしが同じ状況に立たされたとすれば、 いったいどう対応したことか。  実は存じているのですが、 今では死んだ娘にも、 また死んだ夫にも少しの恨みも感じません。  わたしも歳を取って、 更に死さえも受け入れ、 般若の仮面が落っこちてしまったということでしょうか。
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