2/6
前へ
/119ページ
次へ
 母の、 いや祖母の手紙を読んでぼくが感じた想いは祖母の強烈な、 ぼくに会いたい、 だ。  祖母の、 自分の死期の近い、 という心の状態はぼくにはまったくわからなかったが、 そうでもしなければ、 わざわざこんな内容の手紙を書いて寄越さなかっただろう。  恐らく真面目な人なのだ。  事実上故郷がなく、 祖父祖母を知らないぼくに自ら祖母を騙れば、 ぼくはそのまま信じただろう。  けれども祖母は手紙の中で自分にとって辛い事実を告げている。  自分の娘がぼくの母親なのだから孫といっても奇矯な関係だが、 失われた肉親に対する愛情はおそらく変わらないのだろう。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加