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 残念ながらぼくの方には元ぼくの母であったはずの祖母にすぐさま愛情を抱けなかったが、 会いに行くこと自体に躊躇はまったくない。  が、 向こうにも向こうの事情があるはずだから、 それを把握しないで、 ぼくが勝手に動くこともできない。  そんなぼくの逡巡のうちに二通目の手紙が今度は祖母の夫から舞い込む。  ぼくの立場から見れば元母の再婚相手。  手紙の内容を掻い摘めば、 事情は理解しているので会いに来て欲しい、 となる。  それでぼくは祖母の入院している総合病院に向かったのだ。  祖母から手紙を受け取ったあの日は屋根に打ち付ける音が煩いくらいの土砂降りだったが、 祖母の配偶者と示し合わせた冬の日は寒いながらもカラッとした青空が広がっている。
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