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けれどもぼくが面会してからわずか十分も経たないうちに祖母はまた自身の眠りの中に引き込まれてしまう。
それで仕方なくぼくは祖母の配偶者としばらく話をするが、
自分の気持ちが急速に醒め、
衰えていくのを感じてしまう。
やがて祖母の配偶者に暇を告げて病院の喫茶室を去るとぼくはジンとした視線を感じる。
それは病院の建物を出るまで続き、
やがて一人の看護婦がぼくに近寄り、
口を利く。
「お久しぶりです、
隆峯晃さん。
そして、
さようなら」
ズブリと胸にナイフを刺されたぼくが忽ちその場に崩折れる。
最後にぼくが仰ぎ見た空は一律に青くて雲一つなく、
その色が身体に染み込むように正に天晴れな姿で晴れ渡る。
(了)
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