-別荘-

3/16
前へ
/34ページ
次へ
コンコン 「入りなさい」 静かに、且つ素早く部屋に入ること コルトゥィーユ様の暖かなお部屋の空気を逃さない為だ 「レイモンド、私はもうすぐ永い旅に出ることになる」 「行く先は教えられない。だが、この家はレイモンド、君に預けようと思う」 ゆっくりと話すコルトゥィーユ老人には決意と諦めの感が見取れた 「受けてくれるな?」 「はい」 コルトゥィーユ様が僕を手招きする 「私は二日後に発つ。明日、君には暇をやろう。母を連れ来るがよい、ここに居れば心配はない」 「しかし、”庭園”の外は…」 「明日の朝、これを呑みなさい。5日間ほど悲しき者達から逃れることが出来よう」 コルトゥィーユ様は僕に黄色い粉末の入った二つの小さな薬袋を手渡した 「この作り方は知らぬ方がよい。この家には生きる術が揃っておる。ここで暮らすことだ」 「承知しました。ありがとうございます」 暖かな空気が胸にまで入って来たかのように火照り、視界は水に沈んだ
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加