青いベンチ

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木曜日午後6時頃、家の近くの公園の前で懐かしい顔を目にした。 「月子ちゃんじゃん、久しぶり~高校以来だね」 3年間同じクラスだった暁美ちゃんだ。私と違ってたくさんの友達と、男の子からの人気があった暁美ちゃん。高校を卒業してからもう5年。綺麗な暁美ちゃんはもっと綺麗になって私の前に姿を現した。 「久しぶりだね」 平坦な返事をしても、ドキドキと騒ぐ心臓はごまかせない。なんで暁美ちゃんは挨拶程度しか会話をしたことのなかった私に、声をかけてきたのだろう。 「月子ちゃんも仕事帰り?もうお互い社会人だね」 私は頷いた。 私も暁美ちゃんも社会人1年目。同じ立場のはずなのに、やっぱり私には暁美ちゃんがきらきらと輝いて見える。垢抜けないままの私とは反対に、暁美ちゃんはおしゃれなスーツに身を包み、ブランドの鞄を腕から下げて完璧な着こなしだ。 暁美ちゃんとの差を見せつけられているようで、私はちくりと心臓を突かれたような苦しさを感じた。 「ねえ、もし時間があるならさ、ちょっと話していかない?せっかく会えたんだし」 暁美ちゃんが変なことを言うので、私はぎくりとして顔面が強張った。彼女は少し照れたように茶色に染めた髪をいじりながら、こちらをちらりと伺っている。 公園にいるカラスの声がやけに大きく聞こえた。 「い、いいよ。少しなら」 ああ、私はなんてバカなんだろう。 思ってもみないことを言うのは私の悪い癖だ。 本当は今すぐにでもさようならをしてダッシュで家に帰ってゆっくり休みたいのに。 暁美ちゃんがそれを許してくれない。 臆病な私がそれを許してくれない。 断る理由が出てこなかった私は、暁美ちゃんとしぶしぶ席を共にした。
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