chapter4 夕焼けが染める街で

1/1
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

chapter4 夕焼けが染める街で

夕焼けを眩しそうに見る彼の背中を見て 思う。 あの子じゃなくて、私を見てよ… 私は、君が… 君が、好きです… なんて、言えるわけないな。 言えたら、どんなに楽だろうか…。 夕紀「そういえば」 彼が振り向いた。 夕紀「…俺さ、あの子と…付き合うこと になったんだ…。」 梨花「…え?」 夕紀「えっと、だから…電話で話して、 あの子と付き合うことになった。今日、 それをお前に言おうと思って……今まで 本当にありがとうな!」 そう言って彼は無邪気に笑った。 その笑顔は今まで見た中で一番綺麗に見 えた。 梨花「…そっか!やったじゃん!おめでと う!!最後に想いが届いて良かったね」 夕紀「おう!」 もういいよね…わかってた。いつかこん な日がくるだろうって…わかってた。 夕紀「もう、そろそろ帰るか」 梨花「そうだね。」 私達は高台を後にした あの時…あの子と想いが通じてなかった 時。私が勇気を出して何か言っていれば 今日が変わっていたかも知れない… もう、遅いけど… 今まで、ありがとう。さようなら。 今この想いも全て返すから…だから… 梨花「あの…夕紀!お願い…」 夕紀「ん?」 彼…夕紀がゆっくり振り返る 梨花「私のこと…忘れないでいてくれ る?」 せめて…私のことを忘れないで欲しい… 彼は一瞬目を見開くとすぐに目を細めて 「何言ってんだよ。もちろん忘れねー よ!俺の最高の親友なんだからな!」 と無邪気に笑った これでいいんだ…………… 彼女達の見ていた夕焼けの染める街で 彼女は彼への想いを、まるで誰かとかく れんぼをしているかのように隠れて 一粒の水を生み落として あの日の夕焼けの果てへと消えて行った……………………。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!