第21話 告白

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「菜々美のことと、弟のことは関係ないんじゃない?」 冷たいとも思えるような乾いた口調で草太が言った。 そのそっけなさに、優馬の胸がひりりとした。 けれどもう、ここで吐き出してしまわなければ押しつぶされてしまうと思った。 この告白が懺悔なのか、自暴自棄ゆえなのかも、優馬には分からなくなっていた。 「同じだよ。きっとそれが僕なんだ。頭で思うよりも衝動で動いてしまって。そして、酷いことしてしまった後で、記憶を消しちゃうんだ。 きっと、そんなことが他にもあるんだと思う。僕の周りでつじつまの合わないことが、今まで何度もあった。最近菜々美にも言われたよ。記憶が飛ぶこと、今でもあるんじゃない?って。 すごく怖かった。確かにあるんだ。とても小さな、どうでもいいことばかりだったけど。 でも、気づかないふりしてた。自分さえ傷つかなかったらそれでいいんだって、どこかで思ってるんだ。 自分がすごく汚いものに思えて、どうしたらいいのか分からなくて、もうどこかに消えてしまいたくなっ…………」 不意に伸びてきた手によってガクンと体が引っ張られ、ギュッと体が絞られるような痛みを感じた。 突然強い陽光の中に引っ張り出されて目がくらみ、草太が自分に抱き付いているのだと気づくのに時間がかかった。 とっさに優馬が思ったのは落胆だった。 真剣な話をしようとしてる自分に、草太はこんな悪ふざけをするのかと。 「離せよ草太。痛いってば」 けれども、すぐに笑って離してくれると思った草太の腕は、更に力を込めて優馬に食い込んでくる。 「草太! いい加減に……」 「優馬はそんな奴じゃない。卑怯でも、情けなくもない」 そのままの体勢で言った草太の声は驚くほど静かで、優馬は逆に気が動転した。 「草太。なんなんだよ、痛いってば」 ぐいと力づくで引きはがした草太の目はギラリと夕日を受けて光り、そのせいなのか、泣いた後の様に赤く見えた。 いったい自分の話の何が草太の中で感化されたのか。 今まで見たこともない草太だった。 「草太」 「菜々美は大丈夫だよ。あいつは強いから。きっと昨日のことなんて何とも思ってやしない。今日休んだのだって別の事だよ。優馬がそんなに悩むことなんて何もない」
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