第21話 告白

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「どうして。菜々美は女の子だよ。本当は弱いのに強がってるだけだ。昔からそうだったろ? きっとすごく悩んで……」 「菜々美は自分でやりたいことをやってるだけだろ。あいつの勝手なんだ。家が嫌だからいじけて誰かに体売っても、抱かれても、あいつが自分で選んでやってることじゃないか。そんな奴に関わって、優馬が自分を追い込むことなんてないだろ!」 吐き出す様に草太が言った。 なぜそんな言い方をするのか、なぜそんな怒りに満ちた目で自分を見てくるのか優馬には分からなかった。 自分たちはいったい今、何の話をしていたのだったか。 この状況も草太の感情の爆発も優馬には理解できず、不安と興奮で鼓動が速くなった。 不安になるといつも起こる頭痛と耳鳴りが自分と外界に幕を作り、同時に貧血のようなめまいがした。 「草太も菜々美のことが好きだったんだろ? なんでそんなこと言うんだよ。菜々美のことが心配で、あの絵の事が気になって、それで僕に話したんだろ? 菜々美が変な奴に関わってるって思って。 だから松宮に食って掛かったんじゃないのか? 松宮が相手だと思うって言ったのは草太だろ? ずっと気にかけてたんだろ? だったらなんでそんなこと言うんだよ! おかしいよ草太!」 「悪いけど、菜々美のことは別にどうだっていいんだ」 聞き間違いだろうかと一瞬思った。 それは、草太の口から出たとは思えないほど冷ややかな、そして静かな声だった。 優馬の動悸が更に早まった。 けれども不安からなのか、怒りからなのか、失望からなのか分からない。 大切な親友だと思っていた草太が、何か別のものに変わっていくのを見ているようで、足が震えた。 無意識に優馬は半歩草太から体を離す。 このままここに、草太の傍にいてはいけない様な漠然とした不安に駆られた。
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