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走り寄って確かめたが、やはり中身の欠片はなくなっていた。
あれが優馬の自転車のライトカバーの欠片だというは、もう草太の中でゆるぎないものになっていた。
優馬と信夫は、どこかの路上でばったり会っているのだ。
そして優馬はそれを忘れてしまっている。あの5年前の様に。
なぜ。
そしてなぜ今、信夫は「出会った事の証」を持ち、騙してまで優馬を誘い出したのか。
『あの子か……、優馬か』
洞のような目をして、優馬の名を呼び捨てにした数時間前の信夫が脳裏によみがえり、背筋がゾッとした。
―――自分は何の引き金を引いてしまったのか。
草太は獣のような声をあげると、携帯をひっつかみ、転がるように部屋を飛び出した。
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