第4話 知らない顔

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「教えてよ」と言いかけて、優馬は少しだけ息をのんだ。 草太の目が、怒りを含んだように鋭かったのだ。 「行ってみたらわかる」 そう言って草太は顔を背け、建物の裏口のほうに歩き出した。 もう優馬に「やっぱり行かない」という選択肢も、言い出すタイミングも与えるつもりは無いらしい。 「裏口の扉のチェーンは、あの時ゆるくして置いたから、すぐに入れるよ」 優馬は誘導されるままに頷き、草太の後に続いた。 好奇心もわずかにあったが、このとき強く感じたのは、逆らえない気迫のようなものだった。 見えない鎖でつながれたような。 自分が今、誰のあとを追っているのか、一瞬わからなくなった。
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