第32話  優しくて残酷で

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『10年後の僕へ  そして母へ 人は人である限り 天使のように清らかな生き物には絶対になれないと 友人が言いました。 たぶん そうなんだろうなって 僕も思います。 あの月のうさぎの話を覚えてますか? お母さんが教えてくれたお話です。 ずっとうらやましかった。 その身を差し出すことで誰かを救えたら どんなに幸せだろうって。 きっと10年後の僕は くだらないと笑うだろうけど。 やっぱり僕は あの月のうさぎになりたいなって。 そう思います。 求めずに 奪わずに ただ愛情とか優しさとか与えられたなら それが一番幸せな事だって。 でも何の力もない僕には差し出せるものが何もないです。 すごく 悔しい。 本当に、悔しいです。 うさぎにも天使にもなれない僕が願うのは  ただ10年後 お母さんが心の底から笑っていてくれること。 いろんな大切なものを失くしてしまったから もう何も 大切なものを失わないように。 ほんとうにそれだけです。                  優馬 』
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