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菜々美のあの絵の秘密がこの視線の間にあるような気がして、優馬はゾワリと泡立った。
挑発を仕掛けた三井ゆかりも知らないはずの、あの絵の存在。
知っているのは優馬と草太と菜々美と……。 いや、それだけのはず。
松宮が何ら表情を変えることなく教室を出て行った。
静かに席を立ち、その松宮を追うようにして教室を出て行ったのは草太だった。
優馬もそっと立ち上がり、そのあとを追う。
草太が出ていく前の一瞬、優馬を振り返って「付いて来い」と、目配せしたように思えたのだ。
足早に廊下を突っ切り、階段を降りて行こうとする松宮を、草太が踊り場のところで呼び止めた。
優馬は少し距離を保った死角で、二人の会話をそっと聞いた。
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