第17話 性

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小さく、肺から漏れる空気の様に言った菜々美の言葉を、言葉だと理解するのに少し時間がかかった。 けれどそれは確かに、拒絶の言葉っだった。 絶望的な想いで震えながら優馬が体を離すと、菜々美は優馬の顔をまっすぐ見て、小さく笑った。 静かで落ち着いた、まるで同い年とは思えない、包み込むような笑みだった。 「優馬。さよなら」 そしてまた小さくささやくと、菜々美はスルリとその空間から抜け出し、走り去って行ってしまった。 「……菜々美、……菜々美ごめん! 僕は……」 ありったけの声で叫んだが、それが菜々美に届くとは到底思えなかった。 人は天使になんてなれないのよ。 そう言った菜々美の声が今頃胸に重く突き刺さり、優馬を動けなくした。 ――――― 僕は…… サイテイの人間だ ――――― 
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