第18話 異端

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錆びの浮いた冷たいドアを開け、自宅マンションの玄関を入った草太は、そのままリビングのソファに体を投げ出した。 優馬とはなんとなく朝の件があってから顔を合わせづらく、今日はあれから口もきいていなかった。 菜々美のほうは、どういうわけか、向こうからいつも通り草太にも声をかけてくれて、帰り際にも「またね」と笑ってくれた。 朝の「絵」の話を聞いていたはずなのに。 女というものは、自分のハダカの絵を見られても、平気なものなんだろうか。 菜々美とは幼稚園の頃からの幼馴染だったが、歳を追うごとにどんな人間なのか、草太には理解することが難しくなった。 菜々美だけでなく、女子はほとんどそうだ。 だから草太にとって、別段それは問題ではなかった。 周りの女子たちがどんなに女らしくなっても、周りの男子が女子の品定めを始めても、そんなことはどうでもよかった。 問題だったのはむしろ、その”どうでもいい”という無機質な感情なのだ。 鳥を逃がそうと入り込んだモーテルの部屋で、菜々美の裸の絵を見つけたとき、驚きはしたが、それ以上の感情は湧いてこなかった。 代わりに思ったのは、優馬のことだ。 この絵の存在を知ったら、優馬はどう思うだろうと。 菜々美のことが好きだと打ち明けられたことはなかったが、そんなことは肌で感じる。 ずっと一緒に居たのだから。 優馬の視線は、いつもどこか、菜々美を追っているように見えた。 中学になり、自分のクラスの名簿に菜々美の名前を見つけた時の優馬の表情が、いつまでも記憶のなかに張り付いて残っている。
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