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ーー
「(なんで……今……あの時のことを……)」
私にはこれしかなかった。
勉強の出来が言いとは言えず、運動神経は皆無に等しく、かといって容姿が整っているわけでもない。
自慢出来るものがなかった私に、神様が唯一与えてくれた謂わば武器。
なのに、それさえ失ったら私はどうすればいいの……。
バチが当たったんだ。
本当は、知っていた。
スキンケアに余念を欠かさない私だからこそ、彼女の気持ちを一番に汲んであげなくてはならなかった。
彼女だって女の子。
ニキビだらけの自身の肌を見て、なにも思わないわけがないんだ。
そうと理解していても、私は彼女のことが羨ましかった。
周りの視線を恐れずに堂々と胸を張って生きているところが、どうしようもなく憧れた。
私には無理だ。
あそこまで前向きな思考でいられるほど、強くないから。
これは……今まで散々彼女を虚仮にしてきた私への罰。
だとしたら、甘んじて受け入れなくてはならないことなのかもしれない。
まだ現実を受け止めるには時間が足りないけれど、彼女だって最初から開き直っていたわけじゃない。
だから、私なりに少しずつ、少しずつ、己に課せられた試練を乗り越えていこうと思う。
ゆっくりと腰を持ち上げた私は、再び鏡の中の私と向き合った。
彼女が今どこでなにをしているのかは知らない。
でも、なんとなく“聞いてる”気がしたんだ。
スゥーッと深呼吸した後で、息を吐き出すと同時に……。
「ごめんなさい……っほんとうにっ……」
その時赤らんだ頬が歪な形を作った。
【完結】
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