第1章

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 高校時代、私のクラスにいたのだ、特に酷い汚肌(おはだ)の持ち主が。  顔中いたるところに赤く炎症したような肌はとてもじゃないが直視出来ないほどの有り様だった。  寧ろ健康な部分の肌を探すことの方が難しいんじゃないだろうか。  それにも関わらず笑顔でクラスメイトと接する彼女を見ていると無性に腹が立つのだ。  お月様のような凹凸な肌をしている癖に、ヘラヘラ笑ってんじゃねーよ、不愉快なんだよって。  誰が聞いても理不尽すぎる怒りが彼女に対して沸き起こった。  男ならばまだ分かる。  洗顔以外の肌の手入れを抵抗のある男性だって世の中には存在する。 それに、彼等は肌が多少荒れていても彼等を必要としてくれる社会はこの世のどこかにきっとある。  でも女は違う。  女は見た目の第一が全てであり、その要件を満たさなければ存在すらしてはいけない。  だから、生きてる価値のない虫けら同然の人間が私達と同じように息吸って過ごしているのが心底許せなかったのだ。  私のグループはクラスではカースト真ん中あたりに位置しているが、その中に酷いニキビ面の人間は一人もいない。  そのことをいいことに、ある休み時間ふと言葉を漏らしてみた。 「×××さんってさぁ、ちゃんと毎日顔洗ってるのかな?」  
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