第1章

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「え……?」  いきなりの話の切り口に、彼女達は戸惑いの色を瞳に浮かべた。  だろうね。なんせ私達は一度もこの手の話をしてこなかったのだから。  私達のような凡庸な人間が誰かを貶める権利なんてないって……そう思っているのでしょう?  でもね……いいんだよ、下に見て。  だって、努力しない人間は誰だっていけ好かないって思うじゃない。  罪悪感なんて直ぐに彼女に対する優越感で消えてなくなるわ。  そして、皆一様にこう思うでしょうね。  負の感情を私達に抱かせるあいつが悪いってね。 「ほら、今日も一段と顔の腫れ酷かったからさ。痛々しくて見てられないよね」  私はちらりと友人達を見つめた。  彼女達はピタッと表情を固めて、暫く考えた素振りをみせたのち、一人が恐る恐るといった具合に口を開いた。 「や……やっぱそう思う? 私も人の顔についてとやかく言えた義理じゃないから迷ったんだけど、実は秘かに同じこと思ってたんだ」 「わた、私も! 流石にあれはちょっと引くよね。私なら耐えられなくて引きこもりになっちゃうよ」  そこからはご覧の通り、一度火がついた彼女 の陰口はみるみるヒートアップしていって、私は腹の内側でほくそ笑んだ。  なーーーーんだ。  皆も同じこと思ってるんじゃん。  これが世の真理だよね。  人は外見じゃない、中身が全てなんだよって、誰の言葉だよって話。  誰も本心ではそんなこと思っちゃいないんだから。
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