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俺は帝国で雇われていた兵士だった。
帝国のお偉いさんを守り、帝国へ侵入しようとする化け物や盗賊を退治する。
それが帝国近衛兵の仕事だった・・
しかし、そんな上っ面だけの仕事をしているのは新米兵士だけ。
階級が上がるにつれ、汚職は増え、貴族の女性と寝たり、帝国の金を貪る亡者へとなっていった。
そんな騎士道の欠片もない兵士たちは、戦が始まると子供、女よりも早くに逃げ出し、さらには逃げ遅れた人々を盾に使う奴もいた。
兵士たちが逃げ出すほどの戦・・この戦が新帝国、幻想を生み出したのだ。
この世界には想い宝石(いし)という宝石が存在している。
名前の通り、想いを反映する魔法石だ。
一般には、手で握れるほどの大きさしかなく、それよりも大きいものは高値で取引され、貴族や帝国へと買われる。
先の戦により、旧帝国地下に眠っていた想い宝石が掘り起こされた。
それは巨大で5mほどの高さがあり、横に3mぐらいの幅を持っていた。
宝石が半分ほど掘り起こされ所で、作業を中止し、新国王が想いを映した。
途方もない魔力は戦場の火の手を、瓦礫を、血を、涙を全てを浄化した。
ただ、亡くなった者は戻らない。
魔法をもってしても禁忌には抗えない。
国の体勢が変わり、汚職兵士は一掃され、さらに魔法の力で心を探り、悪意のある者を徹底して排除した。
その中に俺は含まれてはいなかった。
安堵したのか当たり前だったのか、どちらであったのかは分からない。
ただ、俺はこのまま燻る人生を送るのはまっぴらごめんだ。
俺は兵士をやめ、排除された兵士の残党を追うこと、悪を断つことを掲げ国を出た。
家族はいない、友も知人も女もいない。
旅をするのにはもってこいだし、守るべきものがないって言うのは、気持ち的に楽だ。
こうして俺は帝国という籠から抜け出し、本当の浄化の旅へ出た・・
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