通勤電車

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 六人目(私を含めると最後の七人目)は高校生だ。たぶん100kgを超えている立派な体格で、青々とした坊主頭の子だ。勝手に私は柔道部君と呼んでいる。高校生にしてはずいぶんと早い電車に乗っている。朝練でもあるのだろうか(柔道部と決まったわけではないが。)彼もごつい体格に似合わずいつもウオークマンで音楽を現代っ子らしく聞いている。それに彼も電車は5年目だ。若いとはいえご苦労様。  こうしていつもの顔ぶれで電車は動く、さあて到着までまだ時間があるからひと眠りするとするか......。  A駅からT駅の丁度中間にある踏切で5人の職員と9人の遺族が花を捧げていた。華美な花束ではないが、R線の一面栗畑の中ではよく映える。  一人の駅員が遺族に聞こえないように小声でささやいた。 「もう事故から3年経つのか」  3年前R線の車両が脱線事故を起こし尊い命が失われた。特に4両目の破損がひどく乗っていた7人は即死だった。  今でもこうして毎年献花式が行われている。今は2両編成になった列車が4両で走っているという目撃談をときどき聞きながら......。
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