5人が本棚に入れています
本棚に追加
男は、楽しんでいた。
この無知で無垢な少女とのやり取りを。
そして一通り笑った後、
「で、この村の人間でもない」
唐突な断定文に、アレはドキリとする。
「……なんで」
「見りゃわかるよ。服装、立ち振舞い、視線に、気品……あんたいい女だ」
ぐい、と腕を引き、再びアレを立ち上がらせる。
それにアレは目をむき、怯える。
「ぃ? あ、の……」
「心配すんなって、今すぐ無理やりなんて気、もうねーよ」
男はすぐに手を離し、そして改めて同じ目線でアレを見る。
アレは微かにそれに、気圧される。
「あんたの、名前は?」
「――アレ=クロア」
今度は男の方が微かに、気圧される。
予想していなかったほど、それは高貴な名前だった。
「……っへぇ、イカすぅ。で、あんたなにやってんの?」
「――なにって?」
「なにって、そりゃあ……」
最初のコメントを投稿しよう!