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そこでガクッ、とアレはくずおれた。
跪き、そして痛みに呻く。
それに一瞬男は呆気に取られ、
「と、これは失礼。レディに立ち話をさせただなんて、紳士として礼に失して――」
「…………」
恭しく一礼する男を、ただアレは感情のない透き通った瞳で見上げるだけだった。
それに男も軽口を止め、
「……どうしたん?」
ただ、一言。
「……わたし、普通に歩けない」
男はそれに、言葉を失った。
それは男が想像もしていなかったことだった。
だがしばらくして、言葉の違和感を感じとった。
「……"普通"に?」
「こうすれば、歩ける」
言ってアレは近くに転がる杖を手にして、全身の力を振り絞り、それを頼りに立ち上がった。
息を切らし、挑むように。
その腰には、先ほど与えた剣を差して。
「ハーッ、ハーッ、ハーッ、ハーッ……!
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