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「…………」
その鋭い視線に、男は圧倒される。
こんな女を、男は見たことがなかった。
先ほど奇しくも自身が語った獅子という軽口は、図らずも当たっていたことになった。
「――あんた、どうしたい?」
それは男が、意図せずに発せられた言葉だった。
この少女には、行くべき場所がある。
そこに溢れ出る信念がある。
「世界を、変えなければ……!」
それは折れるような歯ぎしりの元紡がれた、執念のような言葉だった。
「よっ、と」
それに男はアレの身体をひょい、と抱え上げた。
首の後ろと、膝の後ろに、手を回して。
いわゆる、お姫様抱っこ。
その突然の所業に、アレは目を剥いた。
「なっ、ちょ、か……」
「まーまー落ち着きなよ。あんた、歩けないんだろ? だから俺がこうしてお、ぶっ!?」
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