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「スターバックスで、カードを使いましたよね?」
「えっと?……あ、はい!そうですそうです!あの、ちょっとこれ持っててもらえますか?」
満面の笑みを浮かべると、今買ったばかりのキャラメルマキアートを差し出してくる。
勢いにつられ、反射的に受け取ってしまう。
温かい。
いや、そうじゃない。そうじゃないのだが、混乱していてどう対応すれば良いのかわからない。
女性はバッグの中からスターバックスカードを取り出した。間違いない、僕のカードだ!
「これ、前にちょっと失敗した時、職場の先輩からいただいたんです。その先輩はお友達から。その人も別の人から渡されたんですって。私、今日も残念なことがあったんですけど、このカードのことを思い出して元気が出ました。あなたも、元気出してくださいね」
と言ってカードを差し出してきた。キャラメルマキアートと交換すると、笑顔で手を振りながら歩いて行ってしまった。
僕は呆然とその姿を見送りながら、手元に戻ってきたカードを見つめた。彼女が、メッセージを書いてプレゼントしてくれたカード。
改めて、カードに書かれたその言葉を読み直す。
「心が疲れたときは、1杯だけコーヒーを飲んでね。
自分を癒やした後、他の人を癒してあげて。」
ああ、そうか。
このカードに書かれた言葉が、不特定多数の人に向けた善意のシステムと解釈されたのか。一杯のコーヒーを飲んだ人の手から手へと渡り、多くの人を癒してきたんだ。
ちょうど目にしたスターバックスのロゴマークは、彼女の微笑みに似ていた。
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