冷やし中華、はじまりました

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冷やし中華、はじまりました

うだるような夏の日。 通りがかった中華屋の張り紙が目に入った。涼しげな水色の背景に黄色い文字で大きく書いてある。 「冷やし中華、はじまりました」 こう暑いと食欲も失せるが、冷やし中華なら食べられそうだ。だが、「はじまりました」とは何だ?「はじめました」じゃないのか?まぁ、いい。何にしろ暑いのにはウンザリだ。店の中は涼しいだろう。ともかく入ろう。 「いらっしゃい!」 威勢の良い親父が注文を取りに来る。小さい店で、この親父が一人で切り盛りしているようだ。出されたお冷を飲んでまずは落ち着いた。そして迷わず冷やし中華を頼む。 さて、マンガでも読むか。ラインナップはゴルゴ13に美味しんぼか。どちらにするか、と悩む暇もあらばこそ。 「へいお待ち!」 早いな! まさか作り置きか?だが麺はツヤツヤしている。文句を言うなら一口食べてからでも遅くない。割り箸を手に取り、つゆに絡めた麺を恐る恐る口にした。ふむ、悪くない。のどごしが良く、酸っぱすぎず甘すぎず絶妙なバランスで美味い。ボリュームもかなりサービスしてあったようだが、気づけば完食していた。大満足だ。 「いやぁ、旨かった」 思わず声が漏れた。 「ありがとうございやす」 おっと。店主に聞こえてしまったようだ。飲食店で店員と慣れ合うのは好みではないのだが、やり取りのついでに気になっていた事を聞いてみた。
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