一章

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「いい加減、白黒つけるか?くそゾンビ」 「あ?てめー如きが俺に勝てんのか?まな板」  女性は青年の腹部に拳を叩き込む。が、それを予測していたのか、青年はそれを左手でがっしりと掴み離さない。 「糞愚弟が、てめーは言っちゃいけねー事を言ったぞ。」  先ほどとは打って変わり、女性の顔には表情と言ったものが一切無くなる。弟と呼んだ青年の胸倉から手を離し、バックステップで後方に大きく飛んだ。 「来い、『氷華』」  金色の髪を靡かせ、女性は地面に手を付きそっと呟いた。瞬間、付いた手を中心に氷の花が咲き乱れる。その手をゆっくりと上げると、氷の花の中から一振りの刀が姿を現す。それを一気に引き抜くと、それが合図だったかのように氷の花々が一斉に砕け散る。日の光を反射させ宙を散っていく氷の花弁が作り出す景色はあまりに幻想的で、見る者があれば虜となるであろう。  透き通った水色の刀身は、あまりに透明なため刃を視認するためには凝視しなければわからないほど。峰の部分を覆う透き通った水色のおかげでようやく刀だとわかる。 「てめーがその気なら俺だって抜いてやるよ愚姉……吼えろ『羅刹』」  青年は口の端を吊り上げ、愚姉と呼んだ女性と同じ金色の髪を揺らし、腰に向かって右手を伸ばす。そこから何かを引き抜く動作をして右手をゆっくりと眼前へと運ぶ。その動きに連動するように、何も無い腰の部分からゆっくりと、それは姿を現した。  先ほどの女性のときと打って変わって、静かに現れる黒と白の刀身。刃は漆黒で染まり、それを支えるかのように純白の峰が角膜に焼きつく。眼前で構えたその相反する二色の刀を利き腕の右手で力強く握り、左手をやさしく添えた。 「「行くぞっ!」」  二人が同時にそう叫び、まったくと言っていいほど同じ初動で大地を蹴る。二人が同時に肉薄し、透き通った水色の刀身と相反する黒と白の刀身がぶつかり合う瞬間、その交差するであろう場所で  爆発が起きた。
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