第1話

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第1話

 社会は成熟しきってしまった。  人々はその中で生きている。  完成されたシステムの中、蟻のように規則的な生活を送る。  もちろん、細部まで目を通せば多種多様な生き方、生活があるのだろうが俯瞰して見ていくと、結局は固まっている。  その中に夢はあるのか?  日常という惰性に流されて人は自らの役割を知り、それを演じることに徹する。  一度の社会的な失敗を畏れて、本来為したいことも、為せず。やがて諦めていく。  自分は選ばれた人間ではなかった。  そう感じている人はいないだろうか?  僕はね、そうした人が、もしチャンスがあれば、自分の価値観が変わると思ってる。  自分は選ばれた人間だったんだ。と特別感に酔いしれるのかもしれない。  そんな肯定感が肉体も精神も変質させ、自らの心を解き放って行く。  それを見るのが楽しい。  人が本来持つ欲望を実現しようとする瞬間、光を感じる。まばゆいほどに。  人は自由なんだ。  そう、自由なんだ。  だから、僕はその自由のために繋がれた鎖を外す鍵を渡し続ける。  鍵を外された人はどうなるだろうか?  それが何よりも楽しみだ。  一人の小さな変化が、やがて社会を壊すことさえ出来るのか?  そこには夢がないかい?  人の強さ、可能性に。  僕は、夢を、光を、感じるよ。
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