1人が本棚に入れています
本棚に追加
「エクート様、どうなさったのですか?」
ケープに雪を乗せたまま、ミモザは首を傾げて言った。
深々と降る雪の中、城下町まで歩いて買い物をしてきたらしい。
雪と同じ色のフードを外すと、長い三つ編みが姿を表した。
暖かさのせいで曇った眼鏡をはずし、ミモザは買い物袋と共に、それをテーブルに置く。
中身は、どうやら今晩の夕食の材料だ。
同じフロアには食堂もあるのだが、ミモザは病人食を毎日手作りしてくれていた。
塩コショウ味のスパゲッティーとスクランブルエッグ、カットフルーツ、そして、ヨーグルト。
爽やかな朝にぴったりのメニューだが、勿論夕食だ。
料理が苦手な彼女にしてみれば、なんて手の込んだ食事だろう。
俺のために、ミモザが手料理を振る舞ってくれる。
そう考えただけで、思わず口元がゆるんでしまう。
エクート様は、まるで秘密を早く話したがっている子供のように、ミモザの回りをくるくる回り始めた。
「ねっ、あのね、ミモザにお願いがあるの!」
「お願い……ですか?」
ミモザがカーテンを閉めると、射し込んでいた西日が遮られ、部屋の中は薄暗さを増した。
テーブル上に置いてあった蝋燭に火を灯すと、壁に掛かってある燭台にも、順に灯を移していく。
最初のコメントを投稿しよう!