イストルランドのオバケ退治

5/101
前へ
/114ページ
次へ
「エクート様、どうなさったのですか?」 ケープに雪を乗せたまま、ミモザは首を傾げて言った。 深々と降る雪の中、城下町まで歩いて買い物をしてきたらしい。 雪と同じ色のフードを外すと、長い三つ編みが姿を表した。 暖かさのせいで曇った眼鏡をはずし、ミモザは買い物袋と共に、それをテーブルに置く。 中身は、どうやら今晩の夕食の材料だ。 同じフロアには食堂もあるのだが、ミモザは病人食を毎日手作りしてくれていた。 塩コショウ味のスパゲッティーとスクランブルエッグ、カットフルーツ、そして、ヨーグルト。 爽やかな朝にぴったりのメニューだが、勿論夕食だ。 料理が苦手な彼女にしてみれば、なんて手の込んだ食事だろう。 俺のために、ミモザが手料理を振る舞ってくれる。 そう考えただけで、思わず口元がゆるんでしまう。 エクート様は、まるで秘密を早く話したがっている子供のように、ミモザの回りをくるくる回り始めた。 「ねっ、あのね、ミモザにお願いがあるの!」 「お願い……ですか?」 ミモザがカーテンを閉めると、射し込んでいた西日が遮られ、部屋の中は薄暗さを増した。 テーブル上に置いてあった蝋燭に火を灯すと、壁に掛かってある燭台にも、順に灯を移していく。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加