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妙な術で草を切り裂いたあの瞬間、ヴァンは走り込み、彼女をスライディングキャッチしようとしたのだが、失敗して下敷きになってしまったのだ。
ヴァンは無我夢中だったので、体勢は選べなかった。だから今、ヴァンの顔がリーゼロッテの太ももの近くにあるのも仕方がない。
それはリーゼロッテも理解している。ヴァンの態度に腹を立ててはいたが、彼は命の恩人。そんな彼を非難することなどできない。
だが、ヴァンの一言が余計だった。
「リーゼってさぁ、童顔で貧乳なのに結構エロい下着つけてるんだな」
「んなっ!?」
同級生の男子に至近距離で下着を――しかも入学式用の大人な勝負下着を――見られたリーゼロッテ。拳を力強く握り、ふるふると震えている。
「ねぇ……死ぬ前に言い残すことはある?」
「ま、待つんだリーゼ。その振り上げた手を下ろそうか。む、無抵抗の俺を攻撃するわけじゃないだろうな。俺、命の恩人だぜ? 感謝こそすれ、憎むのはちょっと違うよな? たしかにパンツを見たことは悪かった。謝るよ。だからこれでチャラにしようぜ? な? よし、これで一件落着だな。ふぅー…………ま、赤いのはともかく、布面積が狭すぎる――」
「謝罪直後に、何まじまじと見てんのよこの変態ドスケベ魔術師がぁぁぁぁぁぁ!」
「ぷぎゃああああああ!」
ばちんばちん!
……マウントポジションからの往復ビンタが、ヴァンの頬に炸裂した。
◆
「学園、まだ見えてこねぇじゃん。なぁリーゼ。この道で間違いないのか?」
「…………」
「リーゼロッテさーん。無視しないでくださーい」
「……………………」
「やーい、エロパンツ痴女ー」
「誰が痴女か、誰が!」
「リーゼさん痛いです!」
ヴァンのおしりに、リーゼロッテの強烈な回し蹴りがヒットした。ヴァンは涙目になりながら、おしりを擦っている。
ヴァンに対するリーゼロッテのお仕置きビンタの後、彼らは学園に向かっていた。
ただし、二人の間にほとんど会話はない。あっても、今のように憎まれ口と暴力によるコミュニケーションくらいだ。
リーゼロッテは乙女の秘密(パンツ)が暴かれただけでなく、デリカシーのない発言で傷つけられたのだ。険悪なムードになっても仕方があるまい。
しかも、ヴァンはあまり反省していなかった。これでは彼女の怒りが収まるはずもない。
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