第三章 異端魔術師はパンツがお好き

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 アリアがぼーっとヴァンを眺めていると、彼はその熱い視線に気づいた。 「どうした? 早く立てよ」  ヴァンは再び手を差し伸べる。 「……ええ!」  元気よく返事をするアリア。  一度は拒否したヴァンの手を握る。自分よりも一回り大きい、男の子の手だった。  今日、アリアの目標が一つ増えた。  ヴァンの隣で彼を支えられるような、強い魔術師になる……恋心が、彼女を変えたのだ。  アリアは立ち上がり、 「ヴァン。わたくしと、また戦ってくれます?」  照れくさそうに尋ねた。  しかし、 「え、それは面倒くさいかも……」 「まぢですの!?」  まさかの拒否だった。さすがヴァンだ。安定の空気の読めなさである。 「おかしいじゃありませんか! だって、さっきは仲良くやろうって……」 「あ、それとこれとはべつ。面倒なのは嫌だし」  返す言葉が見つからないアリア。口を開けて何か言おうとしているが、虚しく空を食むにとどまった。  そこは首を縦に振るところでは……本当にやる気のない魔術師だ。アリアはつくづくそう思った。彼は自分の気持ちに正直すぎる。  でもまぁ……ヴァンらしくていいのかもしれない。 「ふふっ。おかしな人ですわね」 「うん? 何笑ってんだよ」 「ナイショですわ」  アリアは人差し指を唇に当てて、 「ヴァンには教えられないことですの!」  乙女の気持ちをそっと胸の内に隠すのだった。
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