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アリアがぼーっとヴァンを眺めていると、彼はその熱い視線に気づいた。
「どうした? 早く立てよ」
ヴァンは再び手を差し伸べる。
「……ええ!」
元気よく返事をするアリア。
一度は拒否したヴァンの手を握る。自分よりも一回り大きい、男の子の手だった。
今日、アリアの目標が一つ増えた。
ヴァンの隣で彼を支えられるような、強い魔術師になる……恋心が、彼女を変えたのだ。
アリアは立ち上がり、
「ヴァン。わたくしと、また戦ってくれます?」
照れくさそうに尋ねた。
しかし、
「え、それは面倒くさいかも……」
「まぢですの!?」
まさかの拒否だった。さすがヴァンだ。安定の空気の読めなさである。
「おかしいじゃありませんか! だって、さっきは仲良くやろうって……」
「あ、それとこれとはべつ。面倒なのは嫌だし」
返す言葉が見つからないアリア。口を開けて何か言おうとしているが、虚しく空を食むにとどまった。
そこは首を縦に振るところでは……本当にやる気のない魔術師だ。アリアはつくづくそう思った。彼は自分の気持ちに正直すぎる。
でもまぁ……ヴァンらしくていいのかもしれない。
「ふふっ。おかしな人ですわね」
「うん? 何笑ってんだよ」
「ナイショですわ」
アリアは人差し指を唇に当てて、
「ヴァンには教えられないことですの!」
乙女の気持ちをそっと胸の内に隠すのだった。
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