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アリアはすでに悟っている。自分の気持ちを誤魔化しても無駄だ。
ヴァンのことが、異性としてものすごく気になる。気になって気になって仕方がない。
「ヴァンともっと仲良くなりたいですわ! ヴァンに見合う魔術師になるためにも、これからも魔術の勉強に励みますわよ! おーっほっほっほ!」
アリアの高笑いがシャワールームに反響する。クラス代表決定戦に負けたというのに、テンションは異様に高かった。
しばらくして、笑い声が響くシャワールームのドアが勢いよく開いた。
「うるさいわね! 静かに入りなさいよ! 隣の部屋から苦情きてるんだからね!」
顔を出したのは、ルームメイトのリーゼロッテだった。
アリアは、彼女がヴァンと仲がいいことを思い出した。放課後、魔術を教わっているし、授業もいつも隣の席で受けているほどだ。
(これは……もしかして、恋のライバルですの!?)
アリアはリーゼロッテの顔を睨みつける。
その視線は徐々に下がっていき、リーゼロッテの胸の辺りで止まった。
(そういえば……ヴァンは大きいおっぱいを所望しておりましたわ!)
瞬間、先ほどまでの敵意が嘘のように引いていく。
「この勝負、わたくしの勝ちですわね! おーっほっほっほ!」
「なんの勝負!? いいから静かにしてくれるかなぁ!?」
よくわからないが、知らぬ間に戦い、そして負けた……リーゼロッテは困惑するほかなかった。
ドアを閉めかけたリーゼロッテだが、その動きは途中で止まる。少しだけ顔を覗かせて、アリアに話しかけた。
「ねぇ、アリア。あなたにお願いがあるんだけど」
予想外の相談に、アリアは目を丸くする。
「リーゼがわたくしに? 珍しいですわね。なんですの?」
「実はね――」
リーゼロッテはアリアに秘密のお願いをした。
それは、他ならぬ師匠のためであった。
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