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ヴァンがパンツについてあれこれ妄想をしていると、ようやく待ち人は現れた。
「やっほ。遅れてごめん……待った?」
リーゼロッテが申し訳なさそうに、上目遣いでヴァンに尋ねる。
「い、いや! 俺も今来たところだよ」
「そう。よかった」
ヴァンが珍しく気の利いた台詞を言うと、リーゼロッテの表情は柔らかくなった。
対照的に、ヴァンは前髪を弄ったり、鼻先を指で掻いたりと落ち着きがない。
もしかして、彼は緊張しているのだろうか。
常識的に考えて、男が女の子に「パンツをくれ」だなんて言えるわけがない。変態のヴァンといえど、さすがに理性が欲望にブレーキをかけたのかも――。
「単刀直入に言うぞ! リーゼ! 早くパンツをくださいおねしゃす!」
全然違った。完全に欲望の奴隷だった。
素早く頭を下げるヴァンを見て、リーゼロッテは嘆息する。
「はぁ……どうしてこんな人にときめいちゃったんだろ……」
「え? 何か言った?」
「な、なんでもないわよ! とりあえず、顔を上げて」
リーゼロッテは誤魔化して深呼吸をする。
「……あげるから、一つお願いしてもいい?」
「なんだ?」
「恥ずかしいから、目をつむっていてほしいの」
リーゼロッテはヴァンを直視できず、自分の足元に視線を落とした。
彼女はつま先で地面をコツコツと叩いている。それが照れ隠しなのかなんなのか、ヴァンには知る由もない。
だが、女心の知らないヴァンでも、これだけは言えた。いじらしいその姿、なんかグッとくると!
「わかったよ。目をつむる。安心して脱ぎたまえ」
ヴァンはそっと目を閉じた。男のクセに、まるで王子のキスを待つ乙女のような表情をしている。心の中は、乙女どころかゲスなのだが。
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