第三章 異端魔術師はパンツがお好き

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 ヴァンがパンツについてあれこれ妄想をしていると、ようやく待ち人は現れた。 「やっほ。遅れてごめん……待った?」  リーゼロッテが申し訳なさそうに、上目遣いでヴァンに尋ねる。 「い、いや! 俺も今来たところだよ」 「そう。よかった」  ヴァンが珍しく気の利いた台詞を言うと、リーゼロッテの表情は柔らかくなった。  対照的に、ヴァンは前髪を弄ったり、鼻先を指で掻いたりと落ち着きがない。  もしかして、彼は緊張しているのだろうか。  常識的に考えて、男が女の子に「パンツをくれ」だなんて言えるわけがない。変態のヴァンといえど、さすがに理性が欲望にブレーキをかけたのかも――。 「単刀直入に言うぞ! リーゼ! 早くパンツをくださいおねしゃす!」  全然違った。完全に欲望の奴隷だった。  素早く頭を下げるヴァンを見て、リーゼロッテは嘆息する。 「はぁ……どうしてこんな人にときめいちゃったんだろ……」 「え? 何か言った?」 「な、なんでもないわよ! とりあえず、顔を上げて」  リーゼロッテは誤魔化して深呼吸をする。 「……あげるから、一つお願いしてもいい?」 「なんだ?」 「恥ずかしいから、目をつむっていてほしいの」  リーゼロッテはヴァンを直視できず、自分の足元に視線を落とした。  彼女はつま先で地面をコツコツと叩いている。それが照れ隠しなのかなんなのか、ヴァンには知る由もない。  だが、女心の知らないヴァンでも、これだけは言えた。いじらしいその姿、なんかグッとくると! 「わかったよ。目をつむる。安心して脱ぎたまえ」  ヴァンはそっと目を閉じた。男のクセに、まるで王子のキスを待つ乙女のような表情をしている。心の中は、乙女どころかゲスなのだが。
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