第三章 異端魔術師はパンツがお好き

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「あははっ! めっちゃ怒ってるー! お、おなかいたいっ!」  リーゼロッテはその様子を見て、腹を抱えて笑う。 「何笑ってんだコラぁぁぁ! 約束が違うぞ、リーゼ! あんたのパンツをよこす約束じゃ……ちょっと待て。まさか、俺を嵌めたのか?」 「そのまさかよ。思い出してみなさいよ。私はね――」 「そうか。あんた、男だったのか……今まで気づいてやれないで悪かった」 「違うわよ! 正真正銘、清らかな乙女よ!」 「清らかな乙女は、クラスメイトの前でパンツあげるとか叫ばないけど?」 「それはあなたのせいでしょう!? い、いいから思い出してみなさいよ! 私との約束を!」 「約束だと…………あぁっ!」  ヴァンはようやく真相にたどり着く。  あのとき、リーゼロッテはこう言った。パンツごとくれてやると。  それはどんなパンツ? 可愛い系? 大人系? お子様パンツ?  それとも……男性用下着?  約束をした時点では、パンツの条件は明確に提示されてはいない。  普段のヴァンなら、こんな子供だましの言葉のトラップに引っかかりはしない。  しかし、交渉材料は女の子のパンツ。エロ魔術師のヴァンは興奮し、冷静さを欠いていた。この曖昧な取引条件を、勝手に女性の下着だと決めつけてしまうほどに。  そう……パンツこそ、ヴァンを嵌めるのに最適な交渉材料なのだ。 「私は一度たりとも『私のパンツをくれてやる』とは言ってない。パンツならなんでもいいの。だから、さっき購買で買ってきたその男性用下着を渡しても、約束は果たされているわ!」  勝ち誇るリーゼロッテのことを、ヴァンは悔しそうに睨みつける。  リーゼロッテが言葉巧みに罠を張るなんて……たしかに頭脳は優秀だが、基本的にはお馬鹿キャラじゃなかったのかと、ヴァンはそう思った。なんとまぁ理不尽極まりない男である。
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